宸T「69/96」コ−ネリアス (ポリスター PSCR-5420) 1995年発表かつて、「フリッパーズ・ギター」という今となっては伝説となっているポップユニットが存在した。
二人組のそのユニットの1人はあの小沢健二。そしてもう1人は現在コ−ネリアス名義で音楽活動を続けている小山田圭吾だったのだ。
「ええっ?!まじですかぁ!」と思う人も多いだろう。確かに今の二人の音楽性は地球とM78星雲ほどの開きがある。それだけに二人が大げんかの末ユニットを解散した、という話もあながちデマだとは思えないのだが、それぞれソロになってから自分のやりたい音楽を追求することに専念し、素晴しい作品を発表し続けている。
でもって、小山田圭吾である。
フリッパーズ・ギター解散後、「ファースト・クエスチョン・アワード」のタイトルで初ソロアルバムを製作した彼(コ−ネリアス)だったが、このアルバムはハッキリ言ってフリッパーズの延長線にある作品であった。
本作「69/96」は、それから2年後に発売された、「これぞコ−ネリアス」とも言うべき、小山田の「趣味」が炸裂する秀作である。
絵に描いたようなポップスであるオザケンの曲に比べ、ジャンル分け不可能なコ−ネリアスの音楽ではあるが、いくつかの特徴を見い出すことはできる。
その一つにサンプリングの多用があげられる。特にKISSやLED ZEPPELINのフレーズをそのまま流用したアレンジが光る。
よく、「この曲は別のあの曲に似ている」とか、「このフレーズは別の曲の盗作だ」などといういいがかり(?)を耳にするが、コ−ネリアスの場合なかば確信犯的に「パクって」いる。
パロディでもカバーでも、ましてや盗作でもない。サンプリングという手法の見せる新しい音楽のカタチを、小山田はオザケンと別れて、コ−ネリアスを作ることでシーンに提示したのだ。
コ−ネリアスはミュージシャン向けのアーティスト(音楽をやる人には楽しめるが、普通のリスナーには取っ付きにくいという意味)だ、という声をよく聞くが、僕はそれでも良いじゃないかと思う。
こういう音楽をやりたいが為に、小山田はフリッパーズ・ギターを辞めたのだ。フリッパーズやオザケンと同じことをやっていては意味がないではないか!
いつも新しい音楽に挑戦する。コ−ネリアスにはずっとこのスタンスでいってもらいたい。時代はコ−ネリアスのあとを必至で追いかけているのだから。
2000年4月3日 記