Torilogy
 

2「TRILOGY」 Yngwie Malmsteen (ポリドール POPC-2311) 1986年発表

Yngwieを嫌うギタリストは多い。それは彼が超絶技巧の持ち主であるが故、フィーリングのかけらもないソロをひく、と思われているからだ。

だがその評価がいかに的外れであるかということは、このアルバムを聴けばすぐに分かる。

ソロ名義になって第3作めである本作「TRILOGY」には、Yngwieの雇った歴代ボーカリストの中でも最強との呼び声高いMarc Boalsが参加。

そしてドラムとキーボードにAnders,JensのJohansson兄弟という(この時点では)不動のメンツを従え、よりバンドとしてのまとまりを感じさせる出来となった。

特筆すべきはその楽曲の完成度の高さである。それでは、いったい前2作と何処が違うのか。

一聴して分かるのは、ボーカル入りの曲が多いということだ。過去2作に比べて格段にボーカル曲が増えている。そしてそのどれもが絶品!前任のJeff Scott Sortも確かに素晴らしいシンガーだったが、Marcは比べ物にならない程凄い。ハイトーンといい、メロディの歌い回しといい何もかもが常軌を逸した実力である。Yngwieは、Marcをクビにした後、何人かのシンガーと仕事をしたが、これを書いている2000年1月現在の時点ではMarcは再びYngwieのバンドに復帰している。つまりそれだけYngwieはMarcの実力を認めているということにほかならない。

だからといってこのアルバムがボーカルにオンブにダッコかというと、勿論そんなことがあるはずがない。ギターをひくのは誰であろう、あのYngwie Malmsteen様だ。

まずは彼のギターソロを堪能してほしい。本当に彼のソロはただ早いだけであろうか?まっさか!こんなにメロディアス&エモーショナルなギターソロを、私は他に聴いたことがない。クラシック音楽とJimi Hendrixに影響を受けたと言われるYngwieのソロは、テクニックに裏打ちされた端正さと、激しい感情の起伏からほとばしる破壊的側面を持つ。特に、ラストチューン「Trilogy Suite OP:5」におけるYngwieのギターの独壇場を聴いてなお、「Yngwieなんてただ早いだけ」と胸を張って言える人はいないはずだ。

そしてギターリフとアレンジ。これもまたYngwieの超人的な作曲センスが炸裂している。いかにギターが上手かろうとも、楽曲がつまらなければ何にもならない。星の数ほどいた「Yngwieクローン」と言われる早弾きギタリストのほとんどが現在消息不明であるのは、早弾きはともかく作曲能力がまるで欠落していたからだ。これは断言できる。

Yngwieの自分勝手さと言うか性格の悪さを挙げて、彼の音楽はちょっとな、という人もいるが、それがどう楽曲に関係あると言うのだろうか。自分の言うことを聞くメンバー達だけを従えて、好き放題に弾きまくるYngwie。このバンドはそれでいいのだ。

結局のところ、このアルバムは歴代のYngwieの作品の中で、最も彼が「気持ちよく弾きまくっている」アルバムであると僕は思っている。それはソロに留まらず、リフにおいても言えることだ。もし最近のYngwieのアルバムを聞いて、「なんだ、たいしたことないじゃん。もっと早く弾ける奴いっぱいいるぜ」と思った人は、是非この作品を聴いて欲しい。何故彼がいまだにカリスマとして君臨しているのかが、きっと分かるはずだ。

2000年2月4日 記

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