宸V「V」Vow Wow(東芝EMI TOCT−8417)1987年発表

 

日本製のへヴィメタル・ロックと言われると、私なんぞがまず思い出すのは44Magnum、Earthshaker、Loudness等のいわゆる「ジャパメタ」と呼ばれたバンド達である。彼等の音楽は、主に英国系ハードロック、すなわちDeep Purple、Rainbow、Judus Priest等を手本としながらも、日本人ならではの叙情的なメロディと、海外のトップミュージシャンにもひけを取らないテクニックで一大ムーブメントを巻き起こした。

その後、聖飢魔‖、Anthem、X(Japan)等、後輩達のがんばりによって我が国でもHM/HRが市民権を得るに到ったのである。

そんな日本のHM/HRの歴史の中にあって、Vow wowは一種異質な存在だ。

Vow wowはもともとギターの山本恭二を中心にBow wowというバンド名で活動を開始。はっきりした年度は忘れてしまったが、80年代前半にはそこそこのキャリアを築いていたように記憶している。しばらくは山本がボーカルを兼任していたが、80年代中盤に大規模なメンバーチェンジを敢行。それを期にバンド名もVow wowに改めた。

このメンバーチェンジの成果として特筆すべきは強力ボーカリスト人見元基の加入である。それまでの日本のへヴィメタルの弱点はボーカルにあると言われていた。Led Zeppelinのロバート・プラントに代表されるような、西洋人特有の強力ハイトーンを出せるシンガーがほとんど皆無だったのだ。

しかし人見はその強力な声の持ち主だった。さらに日本人離れした歌いまわしで我々の度胆を抜いた。

またボーカルパートを人見に任せることによって、山本はギターに専念できるようになり、アレンジの幅も広がった。

加えて人見と供に新加入した、超絶テクニシャンキーボーディスト厚美令のこれまた卓越した作曲能力と演奏センスのおかげで、Vow wowは全く別のバンドとして生まれ変わった。

本作「V」は、そんな新生Vow wowの5枚目のアルバム。メンバーそれぞれの個性のぶつかり合いが、そのままバンドとしての完成度となっている、日本へヴィメタル史上に残る傑作である。

山本のギターリフが炸裂するヘヴィチューンあり、厚美の繊細なメロディが流れるバラードあり・・・・

そして人見の歌は時に力強く、時に優しげに魂に響いてくる。

と、書いていて恥ずかしくなるほど私はこのアルバムに入れ込んでいるが、聴いて頂ければ(好き嫌いは別として)その意味がお分かりになると思う。

何の予備知識もなく聴いたら、絶対に日本人のバンドだとは思えないような完成度の高い楽曲揃いなのだ。

曲の完成度と演奏者の技術の高さ、それがひとつになった時とてつもないアルバムが出来上がる、というお手本のような作品である。

おそらくこのアルバムは日本のみならず、世界の水準からみても珠玉の一枚と言ってよいであろう。

で、そのVow wowは今どうなっているかと言うと、残念ながら6枚目(だったと思う)のアルバムを発表後に解散。リーダーの山本はWild Flag等のバンドを経て、再度Bow wow名義での活動をしているが、編成は結成当時と同様で、山本がボーカルとギターを兼任している。

一方超絶ボーカリスト人見元基は、どうやらロークシーンの第一線からは退いてしまったようで、残念この上ないが、たま〜に松本孝弘(B's)のソロアルバムなんかで歌ったりしている。

なんとか「Vow wow」名義での再結成をしてもらえないかなぁ、なんて思う今日この頃である。

(なんか、この前のレビューでも同じようなシメだったような気が・・・・・・)

2000年8月1日 記

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